胃腸虚弱の原因と対策|H.ピロリ菌の関係

胃腸虚弱: 現代医学では「胃腸虚弱」という病名はありません。しかし、消化管系の器質的な疾患がないのに胃腸の働きが弱く、食欲がなかったり、すぐ下痢してしまったり、便秘になったり、太りたくても太れないなど、「なんとなく胃腸の調子が悪い」と訴える方が少なくはありません。

胃腸虚弱

胃腸虚弱の原因

胃と腸が主役である消化管系は、口から食べたものを消化して、ヒトが生きてゆくためのエネルギーを吸収して生命を保ち、健康を維持してゆく上で最も基本的なシステムといえます。一般に生物は、食べられなくなるとすべての機能が低下してしまいます。やはり、胃腸の調子がよくて「おいしく食べられる」、「快食、快便」状態にあることが健康のバロメーターではないでしょうか。

食物は消化を助ける唾液とともに口で咀嚼され、胃に運ばれて、一時的に貯められます。蛋白質を分解するペプシンを含む胃液によりドロドロにとかされ、少しずつ小腸に送り出されます。小腸では膵液、胆汁や腸液により各栄養素に分解され、分解された各栄養素は、主に小腸から吸収され血液に入り、肝臓に送られ、全身に運ばれます。残ったカスは、大腸に送られ、水分や電解質の吸収が行われ、最後に便となって肛門から排出されます。この一連の働きが、スムースに行われる必要があります。

この消化管系は、無意識のうちに行われ、自律神経系と、外分泌系、各臓器間のネットワークにより調節されています。この自律神経系を中心とするネットワークのどこかで変調をきたせば、胸やけ、げっぷ、食欲不振、悪心、嘔吐、腹部膨満感、腹痛、下痢、便秘等の症状があらわれます。最近では自律神経系の失調に加え、精神的ストレスや生活習慣が原因となる場合も多くなりました。

胃腸虚弱の対策

対策としては、生活リズムをただすこと、疲れすぎ、夜更かし、食べ過ぎ、飲みすぎなどに注意すること、特に食生活を大切にし、食事はゆっくりとくつろいだ中で、よく噛んで食べること、夏は冷たい飲み物は避けることなど、結局、「腹八分」を心がけることではないでしょうか。また、積極的にリラックスしてストレス解消につとめることなども大切です。

胃腸虚弱とH.ピロリ菌の関係

さて、最近話題のH.ピロリ菌をご存じですか?

長年、胃の膨満感など不調で苦しんでいた方が、H.ピロリ菌の除菌処置をしてから、調子がよくなる話を最近耳にします。このH.ピロリ菌は、1983年にオーストラリアの二人の医師によって胃から分離され、へリコバクターピロリと命名された細菌です。H.ピロリ菌の発見によって胃の病気の概念と治療法が大きく変わることになりました。強酸性の胃液にさらされる胃には、細菌などいるはずないと考えられていましたので、大発見でした。その後、胃腸の不調から、胃潰瘍をはじめ多くの胃疾患から胃癌まで深くH.ピロリ菌と関与していることが分かってきました。

中でも胃潰瘍は従来、消化性潰瘍と呼ばれ、かつては「酸なきところに潰瘍なし」といわれていたものです。胃潰瘍の成因は、胃液とペプシンの攻撃因子と、胃粘膜をまもる粘液などの防御因子との「バランス説」で説明され、胃液分泌を抑えるH2受容体阻害剤の開発が競われたものでした。その後、より強力に胃液分泌を阻害するプロトンポンプ阻害剤が開発され、胃潰瘍の治療は、外科的手術から服薬による内科的治療に替ってきました。胃潰瘍の内科的な治療は可能になりましたが、その再発を完全に抑えることができませんでした。そこに登場したのがH.ピロリ菌でした。現在H.ピロリ菌に対しては、抗生物質で除菌処理する方法が確立し、胃液分泌を抑える薬剤との併用により胃潰瘍の治療はもとより、従来、難しかった再発の予防も可能になりました。まさにH.ピロリ菌の発見は、大発見でした。また、最近では研究が進み、生薬のウコンやガジュツ、カンゾウ、ソウジュツにもH.ピロリ菌を抑える作用があることが報告されるようになってきました。

さて,日本人の中年では70%以上がH.ピロリ菌に感染しているとも言われていますので、胃腸の不調がなかなか取れない方は、一度、病院で検査してもらうことも必要ではないでしょうか?
一方、中国医学においては、胃腸虚弱は「脾虚」に相当します。「脾」は「胃」と臓腑で裏腹の関係にあり、食物を消化、吸収して全身にめぐらせ「気,血」を生み出す源であるとして「後天の本」と呼ばれ、重要視されています。西洋医学の脾臓、胃とは異なり、消化吸収能全体と捉えることができます。脾胃の不調は、他の臓腑に影響し、他の臓腑の不調により脾胃も大きな影響を受けます。脾胃は「陽」や「気」とも密接で四君子湯、理中湯や香砂六君子湯が用いられ、脾胃は「湿」がたまりやすいことから、参苓白朮散や胃苓湯、平胃散が、また、「中焦の気の不足」には補中益気湯などが用いられ、それぞれの「証」に合わせて色々な方剤が使われます。
それでも胃腸虚弱への対策の基本は、あまり薬に頼らず、生活リズムの中で食生活を調整して「快食,快便」に導くことが、最も大切なことではないでしょうか。

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